営業職として働いていた頃、一番苦手だったのは、お客さんのところへ一人で訪問することでした。
「営業なんだから、お客さんと話すのは当たり前。」
普通ならそう思えますが、新人だった頃の私は、その「当たり前」ができませんでした。(なんなら10年経っても苦手でしたが…)
商品知識にも自信がありません。
「こんな自分がお邪魔して迷惑じゃないだろうか。」
「何を話せばいいんだろう。」
そんなことばかり考えていました。
お客さんの会社までは行くんです。
でも、会社の前まで行くと車を止められず、そのまま通り過ぎてしまう。
「やっぱり今日はやめようかな。」
そう思いながら近くをぐるっと回って、また会社の前へ。
結局、何周もしてしまったことが何度もありました。
勇気を出して会社に入っても、
「〇〇(会社名)のつまろーです。よろしくお願いします。」
それだけ言って帰ってくることも珍しくありませんでした。
営業としては、とても褒められたやり方ではなかったと思います。
でも、そんな訪問を続けているうちに、顔を覚えてくれるお客さんが少しずつ増えていきました。
「今日も来たの?」
そんな一言をかけてもらえるようになったときは、とても嬉しかったのを覚えています。
最初は「今日は何を話そう」と考えてばかりでした。
でも、何度も訪問しているうちに、少しずつ顔を覚えてもらえるようになりました。
すると不思議なことに、こちらから話題を探さなくても、お客さんのほうから声をかけてくれることが増えていきました。
営業というと、話が上手な人が向いていると思われがちです。
でも私は、話すのが得意ではありませんでした。
だからこそ、「まずは顔を覚えてもらうこと」だけを目標にしていました。
今振り返ると、それも一つの営業スタイルだったのかもしれません。
話すことが苦手だった新人時代の自分が教えてくれたのは、「完璧に話せなくても、人とのつながりは少しずつ作っていける」ということでした。


