営業の仕事で、お客さんと話すことと同じくらい苦労したことがあります。
それは、商品を覚えることでした。
私が扱っていたのは、専門性のある資材です。
見た目はよく似ているのに、種類によって特徴や使う場所も違っていました。
最初の頃は、その違いがまったく分かりませんでした。
先輩の説明を聞いても、
「なるほど。」
とは思うものの、実際に一人になると頭の中が真っ白になります。
商品の規格を間違えて発注してしまい、お客さんや社内に迷惑をかけてしまったことが何度もありました。
そのとき初めて、「商品を覚える」だけでは足りないんだと気づきました。
営業は、「売る側」の視点だけではなく、「使う側」の視点で考えなければいけない仕事でした。
「この製品は、どんなところで、どんな理由で使われるんだろう。」
そう考えられるようになれば、商品も少しずつ頭に入ってきます。
……とはいえ、新人だった私は、そこまで考える余裕はありませんでした。
分からないことを聞かれると、その場で答えようとして頭が真っ白になってしまうこともよくありました。
今なら、
「一度確認して、改めてご連絡します。」
と落ち着いて言えます。
でも当時は、その一言すら思い浮かびませんでした。
「営業は、何でもすぐ答えなければいけない。」
そんな思い込みがあったのかもしれません。
今振り返ると、分からないことをそのままにするより、確認して正確に伝えるほうが、お客さんにとっても安心だったはずです。自分自身もこの言葉を使えるようになってからは、お客さんのところに行くことがとても楽になりました。
新人の頃の私は、知識の少なさよりも、「分からないと言ってはいけない」と思い込んでいたことが、一番大きな壁だったように思います。


